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2020年4月9日木曜日

「力不足」と「役不足」と「役者不足」

 「力不足」と「役不足」。辞書で意味を調べてみると・・・

力不足……それを果たすだけの能力が足りないこと。また、そのさま。
役不足……①与えられた役目に対して不満を持つこと。②その人の実力に対して、与えられた役目が不相応に軽いこと。
(旺文社 国語辞典 第十版)
となっており、お互い反対の意味を持っています。

文化庁の平成18年度の調査では約半数の人が「役不足」の意味を「力不足」の意味と混同して覚えているようです。(参考

 「力不足」とは見てそのまま「力量が不足していること」を意味します。
役不足」は「役目を負うのに不足がある」というように受け取られてしまったがために力不足と混同されていると考察されていますが、実際の意味から推測するなら「力量と与えられた役目を比較して相対的に役目側に不足がある」という意味になります。

 少々わかりづらいかと思うので、図にしてみると以下のようになります。
”力量”と”役割”を天秤の上に乗せます。天秤が釣り合った状態が、実力に見合った役割を充てられていることを示します。

力不足
力不足の図
 「力不足」は”力量”側が軽く、”役割”側に傾いています。すなわち、力量が不足している状態です。

役不足
役不足の図
役不足」は”力量”側が重いため、”役割”側の皿が上がってしまっています。すなわち、役割に不足がある状態です。
このように考えるとシンプルでわかりやすいのではないでしょうか?

 「力不足」、「役不足」と取り違えて使われる「役者不足」という言葉があるそうです。(最近知りました)
「役者不足」は力不足と同じ意味でつかわれるそうです。(参考
しかし、言葉を見たままで解釈するなら役者の「人員不足」を意味するのが正しいように思います。

 「力不足」、「役不足」、「役者不足」の3つの言葉の意味を調べてみてわかったことは、誤用されている「役不足」と「役者不足」の2つは見たままの解釈より回りくどい使われ方をしているということです。
これら3つの言葉は「●不足」で不足している●部分が異なっているにもかかわらず、すべて同じ意味で使われています。本来の意味で使用すればより表現の幅が広がるはずなのに、です。
これらの言葉についてはもっとシンプルな解釈で使ってもよいのではないでしょうか?

おまけ


この記事で取り上げた「力不足」、「役不足」は載っていませんが、「辛党」は辛い物好きという意味ではない?や「風のうわさ」は誤用!など間違えて使われている日本語を4コマ漫画形式で取り上げて解説しています。個人的には前述の「辛党」の本来の意味や「立つ鳥跡を濁さず」の古風でかっこいい類語を知ることができ、勉強になる一冊でした。