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2021年1月13日水曜日

買った食べ物を食べずに捨てるのはなぜダメなのか?

CouleurによるPixabayからの画像

 SNS映えの流行から話題になった、写真を撮るだけでほとんど食べずに捨てられる食べ物たち・・・

これが知られると多くの批判が出ましたが、中には「お金を払ったのだから、その後どうするかは買った人の自由」という意見もありました。この記事ではこの意見は違うのではないかというのを「もったいない」とか「生産者・お店の人に失礼」以外の点から考えてみたいと思います。


法的、経済的な要素を交えながら書いては居ますが、筆者はそういった方面に詳しいわけではないので、正確さについては保証できないことに注意して下さい。

法的な側面から考える

 まず、食べ物を買うこと・売ることについて考えてみます。

 1つ目は「食べ物(食品)」について。食品は当然ですが基本的に人が食べるための物品です。特に飲食店にあるような買った直後にすぐ食べられる状態のものは、食べることが前提で提供されているでしょう。この記事では飲食店で提供される食品に焦点を当てようと思います。

 2つ目は「売買」という行為そのものについて。売買とは、

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって成り立つ双務・諾成・有償の契約である。

とあります。上記の中の双務、諾成、有償とは、

双務・・・当事者の売り手と買い手は互いに義務を負うこと。

諾成・・・当事者の合意の意思表示で契約が成立する。

有償・・・当事者が互いに釣り合った価値の金品を提供する。

と解釈しました。

この中の諾成について考えます。当事者の合意とは、代金の支払いや商品の引き渡しの前の「〇〇下さい。」や「△△円になります。」といったやり取りの中で行われていると思われますが、飲食店の場合を考えると「食べることを目的に購入すること」という条件が暗黙のうちに出されていると推察されます。それは前述の通り、飲食店ではすぐに食べられる状態のものを提供しているからです。

 しかし、食べずに捨てられてしまうのであれば「食べることを目的に購入すること」という条件があった場合、諾成契約が成立していないことになります。

 このことから、飲食店で買った食品を食べずに捨てることは、食べるという条件を満たしていないため、売買があった事自体に疑問を持つ状態にあるのではないでしょうか?

また、売買契約の買い手の義務として「受領義務」というものがあるそうです。(参考)写真を撮影するという利用こそされているものの、購入直後に食べずに捨てられるのは果たして品物を受領したと言えるのでしょうか?

 法律に明るくない筆者の妄想のようなものなのでどの程度正しいのかわかりませんが、食品とはなんのためのものなのか?、売買とはどういったものなのか?、飲食店はどういう意図で食品を提供しているのか?という点に立ち返って考えると、食品を食べずに捨てる行為は最も身近な経済活動の根本を揺るがしているように思います。

 ということで法的な要素を交えながら買った食品がダメな理由を考えてみました。次は経済的な側面から考えてみます。


経済的な側面から考える

 経済的に見て「お金を払えば食べ物を捨てても良い」が間違っているのは、第一に飲食店に損害を与えていることだと思います。

飲食店に食品の後処理を頼んだり、店に設置されているゴミ箱に廃棄した場合、それらは事業ゴミになります。事業ゴミの処理費用はゴミを出した飲食店が負担します。そして、処理費用はゴミの重量または体積によって決まっているため、食べ残しによる事業ゴミが増えれば当然その処理費用は高額になります。ゴミ処理費用が増えればその分利益が減るため、食品を食べずに捨てる行為は飲食店に損害を与えることと言えるでしょう。
とはいえ、利益の設定にこういった費用のことを考えていないわけではないはずです。しかし、さすがに提供した料理すべてを廃棄することは想定外でしょう。

つまりどういうことかというと、端的に言えば「その商品を入手するための対価は支払っているが、廃棄するための対価を支払っていない」ということです。廃棄にかかる費用まで支払っていないのなら、「捨てても良い」という認識は誤りです。

 第二に自治体全体の損害になる可能性があるという点です。
事業ゴミにしなければよいのかと家に持ち帰り、家庭ゴミとして出した場合はどうでしょう。家庭ゴミは自治体のゴミ処理場で処理されます。ゴミ処理場の運用には税金が投入されています。ゴミが増えれば投入される金額も増えるため、自治体が行う他の事業等に割く税金が減ることになります。そうなれば自分の住む地域の快適さを損ない、そういった自治体の発展を妨げて結果的に損害となるといえるでしょう。

飲食店が出した事業ゴミを自治体のゴミ処理場で処理する場合でも同様のことが言えそうですが、前述のように事業ゴミには処理費用がかかります。下記の記事を参考にしようとしましたが、事業ゴミの処理は事業者が支払う処理費用で100%賄われているのかがよくわかりませんでした。ゴミに対してそんな細かいところまで気にする人が居ないせいかもしれませんが……

参考:コンビニスーパー売れ残り廃棄に税金使われるのに「事業ごみは事業者負担で税金0」の誤解は企業に好都合?(井出留美) - 個人 - Yahoo!ニュース(https://news.yahoo.co.jp/byline/iderumi/20190206-00113747/

しかし、食品なのに食べずに捨てることが飲食店だけでなく社会全体の損害につながる可能性があるので「お金を払ったから」という理由に見合った行為ではないと言えるでしょう。