見て思ったのは枝のような形状からルーン文字っぽいなと言う事でした。そこから調べてみて、ルーン文字は時代によって形状や文字数が変化するのですが、形状が最も符合するものはかつてフリースランド(オランダ)とイングランドで使用されていた”アングロ・フリージア型ルーン”でした。
ルーン文字におけるアルファベット、フサルクは上の画像のようになっており、大部分がキャルの魔法の文字として使用されているようです。
アングロ・フリージア型ルーン(参考図書(下記)P.182より模写) |
キャルの魔法文字を見る
上記をもとに魔法文字を読んでみると、きれいな画像で見ることができなかったので読みにくいですが、A(正確には”ae”(※))から始まり、B、C、D……と続いています。Gは形状が違いますがひとまずGであるとします。この調子でアルファベット順に見ていきます。
※正しくは”æ”ですが、便宜上この表記とします。
魔法文字をまとめてみると以下のようになります。
基本的にアングロ・フリージア型ルーンの形状とし、P、R、S、Uはプリコネ側の形状に変更しています。赤枠はアルファベット順としたときの対応していると仮定したフサルクにない文字、青枠は文字の形状が判別できなかったため見た目から推定したものです。
★3キャルの魔法文字一覧(推定) |
Gのルーン文字は最初”ng”ルーンだと思いましたが、形状からWikipediaのルーン文字の記事(以下参考WEBページ)のアングロサクソンルーン文字の”g”ルーンが最も近いと思います。(アングロサクソンルーン文字画像の最下行、右から3番目)
以上から、キャルの魔法の文字はアルファベットをルーン文字で並べていることがわかりました。
では、内側の輪(上下に線が引かれている方)と外側の輪(輪の内側に線が引かれている方)には、具体的にどういうように書かれているかというと
内側の輪:A~Z, A~Xの計50字
外側の輪:A~T, B~Z, A~N, SDFの計62字
となっていました。アルファベット順になっている部分は~で省略してあります。
SDF部分 |
赤枠・青枠についての推測
上の魔法文字一覧の赤枠や青枠部分についてなぜそのルーン文字なのかを考えてみます。
AやOが別の文字を使用しているのは、見た目の複雑さと紛らわしさためと思われます。アングロ・フリージア型ルーンの"o"と”a”と”ae”のルーンは似通っていて、”o”と”a”は枝が途中で折れ曲がっています。この複雑さが使用しなかった理由だろうと思います。また、より時代の古い古北欧型ルーンにおいては”a”と”o”ルーンはそれぞれアングロ・フリージア型ルーンの”ae”と”oe”ルーンと同じ形状でした。
古北欧型ルーン(参考図書p.24より模写) |
Yについても同様に見た目の複雑さが理由と考えられます。ではなぜあの形状なのか?それは参考WEBページのアングロサクソンルーン文字の上から2段目、左から3番目の”j”ルーンを使用しているからと思われます。なぜ”j”ルーンなのか?は参考WEBページにも記載されていますが、その文字の意味が”year(年)”であるからです。それともう一つ、先程の”year”のように”y”の発音を国際音声記号で表すと[j]になります(参考、発音記号の項参照)。各フサルクに付けたアルファベットは音を表すため、”j”の音に関連のあるYを当てられたのではないでしょうか?
GとJのルーンについてはこれは前述のYのルーンにも言えることですが、私が参考にした図書ではなくプリコネ運営はWikipediaあるいは類似した記述の資料を参考にしたためであると思われます。なのでGにはアングロサクソンルーン文字の”g”ルーンが当てられ、Jは英語の発音では[dʒ]を表しますが、フランス語などでは[ʒ]を表すので”ʒ”ルーンが当てられたのではないでしょうか?また、Kのルーン文字はアングロサクソンルーン文字の”k”ルーンと形状が一致します。
残るQ、V、Zについては、Qは小文字のqから、Vは例えば英語のwolf(狼)の複数形wolvesのようにFがVに変化したり、音としてFと同じ唇歯摩擦音に分類されているようにVとFは関係の深いことから”f”ルーンの変形、ZはFとVのような関係がSとの間にあることから古北欧型ルーンの”s”ルーンを当てたと思われます。
ちなみにここまで触れていませんでしたが、参考図書のアングロ・フリージア型ルーンと参考WEBページのアングロサクソンルーン文字の説明を比較すると使用されていた年代と地域が一致しているため同じものだと思われます。参考図書において
”(前略)フリースランド(オランダ)とアングロ・サクソン期のイングランドではこれとは対照的に、7世紀から8世紀にかけて24文字から28文字へ、さらに10世紀には31文字から33文字へとその数を増やしている。”(参考図書p.181より引用)
とあることと、アングロサクソンルーン文字の数が34文字であることから考えてアングロ・フリージア型ルーンは7世紀末から8世紀初めあたりのもの、アングロ・フリージア型ルーンは10世紀以降のものと時期の異なるものであると考えられます。
以上がアニメーション版★3キャルの魔法文字について調べてみた結果です。私の推測を含んでいたり、画質の良くない画像をもとに調べたために間違っている箇所があるかもしれませんが参考になれば幸いです。
プリコネ世界の文字については、
参考図書:ラーシュ・マーグナル・エーノクセン()『ルーン文字の世界 - 歴史・意味・解釈』(荒川明久訳)国際語学社 ISBN9784877313593.