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2024年11月12日火曜日

【数学】「互いに素」の意味が「ともに素数である」じゃないことを「互いに」と「ともに」の違いから考えてみる

 「互いに素」とは、「2つの整数の最大公約数が1である」という意味なのですが、”素”という字を素数のことと解釈して「2つの整数がともに素数である」という意味だと誤解する人がいます。
ですが、”素”を素数のことと解釈したとしても「2つの整数がともに素数である」という意味にはなり得ないことを、「互いに」と「ともに」の意味の違いから説明してみようと思います。

「互いに」の意味を調べると
双方が同じようなことをしあうさま。また、同じような状態にあるさま。
とあり、どちら側から見ても他方と同等のつながりがあることを表します。
「ともに」の意味を調べると
一緒にあることをするさま。また、そろって同じ状態であるさま。
とあり、それぞれに共通点がある様子を表します。

「互いに素」と「ともに素」の違い
 上記を踏まえると、2つの整数A,Bについて「互いに素」であるというのは、整数Aから見ても整数Bから見ても他方に対し”素”というつながりがあるという意味合いになります。すなわち、整数AとBの間にあるものが”素”であるということです。
そして、2つの整数A,Bについて「ともに素数」であるというのは、整数Aと整数Bには素数であるという共通点があるという意味合いであり、”素”=素数というのであれば、”素”は整数AとBそれぞれが有する性質であるということになります。
「互いに素」と「ともに素数」では”素”がどのようなものなのかが全く異なるため、「ともに素数」が「互いに素」に対する説明として適さないことがわかります。

 ところで、整数における「互いに素」の用法の大元になったと考えられるのは、集合論における「互いに素」で、その意味は「共通の要素をもたない」です。
外部リンク:素集合 - Wikipedia
「互いに」の意味を踏まえて言い換えると「集合Bから見て集合Aの要素の中に同じものは1つもなく、集合Aから見て集合Bの要素の中に同じものは1つもない」となります。
すなわち、一方の集合からみて他方の集合の要素の中に同じものが1つもない様子のことを”素”と呼び、これがどちらの集合から見てもいえるために「互いに」がついていると考えられます。

すると、整数AとBそれぞれの約数の集まりを集合と考えると約数1を共通の要素としてもつので「互いに素」といえないのでは?という疑問が生まれます。
そこで、約数が整数の構成要素である素因数の積であることに着目して各整数の素因数の集合を考えると、共通の約数が1だけの2つの整数の間には共通な要素となる素因数が存在しないことがわかります。

互いに素
したがって、集合論に基づけば整数における「互いに素」とは、整数の素因数に着目した「2つの整数の間に共通の素因数がない」ことを指していると考えられます。
「2つの整数の間に共通の素因数がない」と同値なものに「2つの整数の最大公約数が1である」があり、こちらの方が「互いに素」の意味として浸透しています。そのため、「互いに素」な整数の約数に着目してしまっていることが集合論における「互いに素」の意味と齟齬が生じる原因のようです。